会社名義の財産は、離婚のときに財産分与請求できるの?

コラム
こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。   タイトルの件で解説します。   ご主人もしくは奥さんが会社を設立したり、親の会社を継いだりしたときに、配偶者さんも取締役等会社役員になることは多々あります。   しかし、夫婦関係が破綻してしまうと、離婚と同時に取締役も辞めさせられるというケースも多々あります。   原則からすると、配偶者の立場と、取締役等会社役員の立場は全く違うため、離婚と同時に取締役の辞任を迫ったり、解任することは公私混同と言えます。   では、夫婦二人三脚で会社のために貢献し、築き上げた会社名義の財産については、どのような扱いになるでしょうか。ご自身が取締役や代表取締役としてご夫婦で会社を経営している場合に、知っておくべきことをお伝えします。   ・そもそも、会社名義の財産は離婚のときに請求できる財産分与の対象なのか? 例として、代表取締役が夫、取締役が妻という株式会社を夫婦で経営しており、今般、夫婦仲が破綻し、奥さんが離婚へと踏み切ったという設定で進めます。 日本の99%は中小企業で、このような夫婦だけや家族だけで経営している会社は非常に多いです。 このような場合、取締役個人名義で保有している財産はほとんどなく、自動車、自宅、株式等金融資産等、様々な資産が会社名義であることはよくあることです。ご主人名義の財産はおそらくほとんどないので、会社名義の財産について離婚のとき財産分与請求したいというのは当然のことです。 では、このような場合は、財産分与の対象として扱えるのでしょうか?   回答は、「原則は財産分与の対象になりません。」となります。 なぜなら、経営者の立場としての夫と法人は、別人扱いとなり、法人所有財産はあくまで法人のものだからです。 奥さんが急に離婚と役員辞めろと言われて、ご主人に離婚は応じるけど、役員は辞めないので役員報酬はきちんと支払ってねと反論できるのと同じように、あくまで個人と法人は別の立場であるので、夫婦で経営する法人名義の財産は、離婚時に財産分与請求できる財産ではありません。   ただし、全く原則通りの考えで進めざるを得ないのかといえば、そうではないこともあります。そのようなケースは、「夫婦で経営する会社の経営者である夫の個人資産と、夫婦で経営する会社が保有する資産の線引きがはっきりしない」場合です。 この場合ですと、会社保有財産であっても離婚時に財産分与請求できる可能性があります。 なぜなら、このような場合は「法人」形態はとっているものの、実質的には個人事業の延長線上の経営スタイルだからです。 このような経営形態ですと、たとえ会社保有財産であっても、それこそ「公私混同」ということになり、今回のケースですと、ご主人のものなのか、会社のものなのかがはっきり線引きができないということで、離婚時の財産分与対象財産として請求できる可能性はあります。   請求できる財産としては、下記のようなものが考えられます。 ・普段家族で使っている会社名義の車 ・ご自宅として使い、住民票登録している土地、建物   ただし、これらについては、実際にお話をお伺いしないとどのような主張が可能か分からないので、私を含めた離婚専門弁護士に相談することをお勧めします。   ・会社経営しているご夫婦が離婚するときは、離婚専門弁護士に相談を。 実は、日本には会社が420万社あり、各社全員別人だとすると、30人にひとりは法人経営者です。 これは、小学校や中学校の1クラスに学級委員長が1名いるような感じであり、「社長」と呼ばれる方が相当多いことが予測できます。 よって、このようなケースに陥っているご夫婦も多いと思います。 会社経営をされているご夫婦の離婚の場合は、まずは離婚専門弁護士に相談することをお勧めします。 なぜなら、以下の4点につき、離婚専門弁護士が対応できるからです。   ・財産の調査や評価ができる 先ほど、420万社会社が存在するとお伝えしましたが、うち大企業と呼ばれる会社は0.3%。 また、従業員5名以上在籍している会社は全国で60万社。 ほとんどが零細企業と呼ばれる形態です。 となると、先ほど申し上げた、「財産における公私混同」の話が出てくるのですが、どの財産が分与対象になるのか、例えば会社の株式における評価額の算定等は専門家でないと対応ができません。 また、相手が財産隠しをする可能性も否定できないです。 弁護士に相談や離婚業務を依頼することで、確実な財産の検討や評価ができ、離婚時の不利益を低減することが可能です。   ・トラブル回避や拡大防止を実現できる 基本的に、相手方は少しでも財産分与や慰謝料額を減らしてこようと対応してきます。 また、経営者という方は、自身で物事を判断し事業を行っていかなくてはならないことから、基本的には、人の言うことは利く耳を持たず、自身の意見を何が何でも通そうとする傾向があるように思います(もちろん、人それぞれいろんな方がいらっしゃいます。)。 よって、離婚する場合に生じ得る問題点を整理し、トラブル回避や拡大防止を行い、円滑な離婚へと進めるためには、離婚専門弁護士のチカラが必要かと考えます。   ・養育費や婚姻費用を適切に計算できる 離婚前に別居に至った場合、収入の高い方が、低い方に婚姻費用と呼ばれる金銭を支払う必要があります。また、お子さんがいる場合、養育費の設定も必要です。 役員報酬が高い経営者だと、当然に婚姻費用や養育費が大きくなるため、できる限り少なくしようと訴えかけてくることは当然あります。 適正な金額を算出するには、専門的な知識が必要なので、離婚しようと考えている方が不利益にならないようにするには、弁護士のサポートが重要と考えます。   ・調停や裁判に代理人として対応可能 日本の90%以上は協議離婚なので、調停や裁判へ進むことはそんなにありません。 しかし、お金の問題はすり合わせがうまくいかず、協議離婚では対応できないことも多々あります。その際は次の段階で調停、調停でも折り合いがつかなければ、離婚裁判へと進むことになります。 ここまでくると、相手方は弁護士をつけてくることは容易に想像できることなので、まずご自身単独では対応が厳しいと思われます。 また、相談相手がいることで、ご自身の考えも整理され、強く出るところ、吞んでもいい要求を冷静に判断できるかと思います。 そこで、話し合いの段階から弁護士に相談し、有利に進める準備をしておくことが肝要です。 一人で悩まないで、まずは相談だけでもしてみましょう。   ・まとめ 夫婦で法人を経営している場合、「二人で築き上げたもの」という考え方は確かに正しいですし、お二人で会社を成長させたことは事実です。 ただ、どうしても個人としての夫婦と、法人は別人ですし、万一、財産分与の対象財産と判断できても、財産価値の算定が難しいケースが多々あります。 離婚をお考えの方は、一度私を含めた、離婚専門弁護士に相談いただくことをお薦めします。   私は、毎日、何らかの形で離婚に関する事柄を取り扱っております。   もし、離婚のことでお困りのことがありましたら、まずは下記よりお電話、メールを下さい。   心配事を少しでも軽くできるように、お話をお伺いします。   ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。   ※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。   ※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。