離婚前に別居を考えている方へ

コラム

 

こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。

 

タイトルの件で解説します。

 

すでに夫婦関係が険悪な状況であると、「早く別れたい」「もうヒトリになりたい!」と考える方は多いと思います。

 

実際に、私のところに初めて相談された時点で、すでに別居状態であるケースはたくさんあります。

 

しかし、離婚前の別居は、メリット、デメリットがあります。

 

まだ離婚していないけど、別居を考えている場合は、一度この記事を読んで、よく考えて、事前に準備を整えたうえで実行してください。

 

  • 離婚前に別居することのデメリット

まずは、デメリットをお伝えします。デメリットは、下記3点です。

・同居義務違反・悪意の遺棄に該当するかもしれないこと

→結婚すると、民法上、夫婦お互いに同居する義務が課されます。とはいっても、基本的には夫婦は同居する形が通常ですから、当たり前すぎて、条文にする必要があるのかと思うかもしれません。だからこそ、パートナーの断りなく、勝手に家を出て行き、別居生活を送ることは、法定離婚事由である「悪意の遺棄」という項目に該当する可能性があります。

このケースに該当する場合としては、「別居に正当な理由がない場合」があります。

 

よって、衝動的に話し合いもなく別居したことが、裁判所により「悪意の遺棄」と認定されてしまうと、非常に苦しい立場になり、離婚交渉時に相手方有利となってしまいます。

また、配偶者から慰謝料を請求されることもあります。

 

つまり、正当な理由がないのに、勝手に別居して、生活費等も渡さないでいると、ご自身が不利益を被る可能性が非常に高いことを踏まえておいてください。

別居前には、まずは夫婦で話し合いの場を持つことが大事です。とは言っても、別居を考えるほど夫婦仲が悪化している状態で話し合いと言われても難しく感じる方も多いのではないでしょうか。そんな時は、一度専門家に相談してみましょう。少し違った視点から別居について考えることができるかもしれません。

 

なお、DVを受けている場合などは、ご自身の生命や身体の危害を避ける行為となるため、無断別居は「悪意の遺棄」には該当しません。

 

・生活苦に陥る

→これについては、確実に発生する問題だと思われます。共働きであっても、パートナーの収入分は減りますし、専業主婦(夫)の場合には、パートナーの給料等で生活を送ってきたことになりますから、別居後すぐに生活基盤を構築しないと、生活苦に陥る可能性が高いです。そこで、このことを覚悟することは当然ですし、生活水準を下げることも考えなくてはなりません。

 

なお、離婚前の別居期間については、民法で、配偶者との間で婚姻費用(生活費)を分担することが規定されておりますので、

・パートナーよりも収入が少ない場合

・子どもと同居する場合

には、パートナーに対して生活費の支払いを請求できることは押さえておいてください。

 

・ヨリを戻す機会を完全に失う

→離婚前に無断で別居してしまうと、感情面でのこじれやわだかまりを、パートナーが当然持つことになり、没交渉となって、関係改善の機会はもはやありません。

ですから、「もう絶対に離婚する!その決心は絶対に揺らがない!」限りは、別居はしないで、なんとかパートナーとの不和をやり過ごす方法を見つけて同居を続けるのが良いでしょう。パートナーの言動の受け取り方を変えてみるだけでも、少しは気持ちが楽になるものです。

 

 

  • 離婚前に別居することのメリット

次に、メリットをお伝えします。メリットも、下記3点です。

・精神的に落ち着ける

→夫婦間が険悪になると、大きな精神的負担を抱えます。よって、感情的ないさかいが絶えず、お互い冷静になれません。そこで、いったん精神的な落ち着きを取り戻すために別居し、考えを整理したり、今後の身の振り方を冷静に考えることができます。この時に、弁護士に相談する等アクションを起こすことも検討しましょう。

 

・DVやモラハラから脱出できる

→DVやモラハラを受け身体的・精神的な虐待があるような場合は、いち早く逃げましょう。上述の通り、これが原因による無断別居は、「悪意の遺棄」に該当する可能性はほぼありません。ただし、モラハラについては、個人の受け取り方も異なり価値観の違い等との線引きが難しいことがありますが、ご自身の心が壊れそうな場合はまずはご自身の身を守ることが大切です。

基本的に、DVやモラハラを行うパートナーは、話し合いによる解決の可能性は極めて低いので、まずは別居して生命・身体と精神を守り、安全な状況になった時点で、離婚請求や慰謝料請求などを弁護士に相談し共に考えていきましょう。

 

・長期間の別居により、離婚が認められやすくなる

→パートナーが離婚を拒否し、いわゆる不倫などの離婚理由がない場合には、別居をする方策を取ることが最善の場合があります。

 

なぜなら、相手が離婚を拒否している場合だと、離婚訴訟(=裁判)にまでもつれることになりますが裁判で離婚が認められるためには、法律で定められている「法定離婚事由」がないとダメです。このひとつに、「婚姻を継続し難い重大な事由」という項目があり、不倫とかDVとかはないけど、なんとなく合わないから離婚したいと考えたときに、この項目に当たるかどうかが問題になります。

よく、「性格の不一致」が離婚理由とテレビ等で聞くと思いますが、これは性格の不一致のみでは即「婚姻を継続し難い重大な事由」とされるのは難しいですが、別居期間など総合的に考慮して「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると認めてもらう必要があります。

 

なお、別居の継続が「婚姻を継続し難い重大な事由」と判断される機関としては、通常3~5年程度かかるため、長期間の別居生活を送ることを想定しておく必要があります。

 

ただしこのような法定離婚理由の有無が問題になるのは、離婚裁判になった場合です。協議離婚や調停離婚のように双方の合意で離婚が成立する段階では、離婚の合意があればよく、離婚理由は問題になりません。離婚するということにパートナーが納得してくれるかどうかの問題で、そのためにはパートナーとの話し合いが大事ということになりますが、話し合いが難しいと感じる方が増えているのも事実です。

そんな時は、一人で悩まずに相談すると、前向きになれたりします。

 

以上、離婚前の別居に関するデメリット、メリットについて書きましたが、離婚とは、様々なハードルを乗り越えて、お互い納得しないと成立しない事柄なのです。

 

もし、離婚のことでお困りのことがありましたら、まずは下記よりお電話、メールを下さい。

 

心配事を少しでも軽くできるように、お話をお伺いします。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

 

※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。

 

※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。