こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。
タイトルの件で解説します。
養育費支払いの取り決めで、「子どもが成人するまで」という記載をすることがあります。
ニュースにもなりましたが、令和4年4月1日から、法律上の成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。
一方で、飲酒、たばこ、競馬などの公営ギャンブルを利用できるのは20歳からということもあって、この「子どもが成人するまで」は、法律上の18歳なのか、飲酒等ができるようになる法改正前の成人である20歳なのか、不安に感じるかと思います。
また、20歳だと、近年の進学率の向上により、大学や専門学校に在学していることも考えられるため、成人とはいえ、学生ですから、まだ経済的に自立はしておらず、学費等お子さんにまだまだお金がかかる時期です。
そこで、本ブログで成人年齢と養育費との関係性について記載しますので、気になる方は読んでいただけたらと思います。
養育費とは、経済的・社会的に自立していない子どもに対する扶養義務を根拠として支払われる金銭です。
要は、ひとり親になると、一緒に住んでいる親は直接子育てを行うことができますが、離れて暮らす親は直接子育てを行うことができないないため、離れて暮らすお子さんを金銭的に支援する必要があり、子供のための金銭です。
養育費の支払期限については、特に法律で明確化されておりません。
そこで、考察すべきキーワードは、「経済的・社会的に自立していない」ということです。
中学卒業後、即就職して、給料を得て会社の寮等で自活している場合は、未成年である15歳であっても、養育費をもらえる権利が無くなります。
逆に、20歳であっても、学生等で、親の扶養が必要であれば、経済的・社会的自立をしているとは言えないため、養育費をもらえる権利があります。
それを考えると、お子さんが、たとえ法律上は成人している年齢であっても、「経済的・社会的に自立していない」状態であるかどうかで、養育費をもらえるかどうかを判断すればいいことになります。
ですから、確かに法改正で、成人の年齢が18歳と2歳引き下げられましたが、お子さんが18歳であっても、「経済的・社会的に自立していない」状態であれば、養育費をもらえる権利=養育費を支払う義務があると言えます。
よって、養育費の支払終了の時期は、お子さんの状況がどのようなものであるかを総合的に考慮して判断することになります。
- 養育費の支払時期を「子どもが成人するまで」とすでに取り決めている場合は?
当然ながら、令和4年3月31日以前に離婚が成立し、協議書、調停、裁判において養育費の支払い終期を「子どもが成人するまで」と取り決めているケースがあります。
法務省は「養育費の取り決めをした時点(令和4年3月31日以前)では成人年齢が20歳であったことから、民法改正によって成人年齢が引き下げられたとしても、これまでどおり20歳まで養育費の支払い義務を負う」という見解を出しています。
上記から、令和4年3月31日以前の取り決めについては、従来の成人年齢である20歳までとして取り扱います。
逆に、令和4年4月1日以降の取り決めについては、現行の成人年齢である18歳までとして取り扱うと読み取れるので、養育費を受け取る親御さんは、「子どもが成人するまで」という取り決めすることは避けた方が良いでしょう。
- 本ブログを読まれた日以降で、養育費を取り決める場合の注意点
注意点としては下記の2つがあげられます。
- 取り決めるべき事項を明確に定める
・1か月あたりの支払金額→裁判所が公表している養育費算定表を基に算出
・支払期間
→本ブログのテーマです。「18歳の誕生月まで」「22歳に達した後最初に到来する3月まで」等明確にしておきましょう。
・支払方法→通常は指定口座に振り込み
・支払時期→毎月20日までなど、具体的な期限を記入しましょう。
- 養育費を含めた取り決め事項を全て公正証書にしておく
→強制執行認諾文言付きの公正証書だと、万一指定期日に指定口座に養育費が入らないようになった場合、裁判することなく即座に相手の財産や給与を差し押さえて強制的に回収することが可能になり、かつ支払わなければ差し押さえをされるという心理的プレッシャーを与えることで、スムーズな養育費の支払いにつながるという利点があります。
離婚後、お子さんが経済的・社会的自立を達成するまで、お子さんの人生のイベントが目白押しですから、着実に押さえておくべきポイントをお伝えします。
- 養育費増額、養育費支払期間の延長
養育費の取り決め後、元ご夫婦の経済状況や家庭環境に変化が出ることは十分に考えられますし、お子さんの人生が、離婚時点では高校卒業して専門学校と考えていたのが、大学進学希望に変わったので、塾に通いたいなどということは十分に起こりえます。
このことで、毎月の養育費では不十分であったり、支払期間の延長をしないと子育てする側にとって経済的に苦しくなるという場合は、養育費を取り決めた時の基礎となった事情に変更があったとして養育費増額や支払期間延長を請求することが可能です。
ひとまずは、元ご夫婦同士で話し合って、養育費増額、支払期間延長を取り決めしていくこととなります。話し合いでは結論を出せない場合は、家庭裁判所に養育費増額調停の申し立てし、調停委員を通して話し合って決めていくこととなります。
また、養育費を支払う側の大幅な減収などによる養育費減額請求も可能です。
- 成人年齢引き下げを理由に、養育費支払がストップされた
上述の通り、令和4年3月31日以前の離婚で「養育費の支払いは成人に達するまで」と取り決めていたら、20歳まで支払義務が発生します。
養育費を支払う側の勝手な判断で、「法改正により、子どもが18歳になった時点で成人だから、養育費の支払義務は終わった」とする方が出てくることが予想されます。
20歳になるまでに養育費の支払いが止まってしまった場合は、法務省の見解を根拠に、養育費の支払いを相手に対して求めていく必要があります。
それでも支払いが無かったり、拒否された場合は、強制執行認諾付き公正証書を作成している場合は、強制執行手続きを粛々と進めていくことになります。
なお、養育費の時効は5年です。ただし、調停、審判、裁判で、その時点での未払い分の支払合意や判断がされることがあります。その未払い分の時効は10年です。
時効成立前であれば、様々な法的手段を活用して、養育費を受け取る権利を守ることが可能であるため、未払いの養育費がある場合は、早めに対応する必要があります。
先述の通り、令和4年4月1日施行の改正民法により、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。しかし、令和4年3月31日以前に離婚の取り決めで、「養育費支払いは子度が成人になるまでとする」となっていれば、20歳まで受け取ることが可能です。
相手の法改正を利用した勝手な判断で、18歳以降の養育費の支払いストップや支払い拒否の意思表示が、今後増えてくることが予想されます。
そのような状況になっている場合は、時効の問題もありますから、養育費を受け取る権利を着実に行使できるように、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。
私武澤は、離婚後に養育費金額の見直しや支払い期間の変更を行いたいというご相談や対応、未払い養育費の回収も行っております。
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。
※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。