こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。
タイトルの件で解説します。
日本人は持ち家志向が強く、ご夫婦でマイホームを持つことを目標としている方が非常に多いです。
しかし、夫名義で保有することが多いため、いざ離婚となったときに、「離婚後はこの家をどう活用するのか」とか、「住宅ローンがまだまだ残ってるけど、誰が払っていくのか」「売れた時のお金の分け方はどうしたらいいの?」など、大きな問題を抱えることとなります。また、夫名義のマイホームに、お子さんの学校や近所付き合いのしやすさなどでから、奥さんが今後も住み続けたいと希望したときは、どうしたらいいのかということもよくある問題です。
離婚をする夫婦にとってのマイホームの取り扱いについて、このブログでお伝えしようと思います。
- 不動産の名義(所有者)と住宅ローンの契約内容を把握する
不動産は、権利関係が非常に複雑で、しっかりと把握しておかないと、思わぬ落とし穴があります。
まずは、マイホーム本体やローンの権利関係等を正確に把握しましょう。
・不動産の名義・評価額
まずは、不動産の名義=所有者を確認します。
だいたいのところ、下記のパターンが多いかと思います。
・夫のみ
・夫婦で共有→奥さんの方が少し持分低め 例:夫:妻=7:3等
共有の場合は、まずご夫婦の持ち分がどれくらいあるのかを確認します。
また、一部資金援助してくれた親族も共有者として存在している可能性がありますので、その点も注意しましょう。
これらの情報は、法務局で不動産履歴事項全部証明書を取得することで分かります。
名義人が判明したら、マイホームの不動産評価額を調べることとなります。
通常は、固定資産税評価証明書による査定や、不動産会社に依頼して、取引実績に基づいた査定書を作ってもらうことになります。
評価額査定の結果を得ると
・売る
・住み続ける
・貸す
など、将来の方向性を決めるための材料になるかと思います。
さらに、不動産会社に相談することで、売値や家賃の相場だけでなく、実際に売れそうか、貸せそうかという、取引に関するリアルな情報も聞けますので、離婚を考えたら、一度、不動産の査定を依頼することをお勧めします。
・住宅ローンの契約内容
不動産の名義や評価額が分かれば、次に調査が必要な項目は、住宅ローンの契約内容です。
マイホームを現金で買うことはまず考えられず、ほぼ100%の方が住宅ローンを利用してマイホームを購入したり建築したりしていると思います。
ですので、必ず住宅ローン契約書をチェックし、現時点でどんな契約内容となっているのかを把握します。
通常考えられる契約パターンとして、主に下記の3つがあります。
・夫婦のどちらかが借り入れを行い、もう一方は連帯保証人になっている契約
・夫婦が連名で借り入れをしている契約
・夫婦のどちらかだけが借り入れを行い、もう一方は何の関与もしていない契約
契約パターンを把握したら、
・現時点でのローン残高
・ローンの金利
・ローンの返済方法
について調査します。
これらの調査の結果を受けて、現状の不動産の価値に対する住宅ローン残高やローン借り入れ条件により、売る、貸す、住み続ける等、将来的なマイホームの取り扱いの方針をある程度決めていく必要があります。
夫婦間の話し合いで、下記のことを決める必要があります。
・売るのか、住み続けるのか、貸すのか
・お子さんがいる場合、友達関係や住環境を保つのか、我慢してもらって、奥さんの実家や全然縁のない土地に引っ越すか
お子さんがいる元夫婦のよくあるケースとしては、元夫名義のマイホームに、元妻とお子さんが一緒に住んで、住環境や友達関係をできるだけ維持する場合があります。
このケースについて、考察してみます。
・離婚後もマイホーム及び住宅ローン契約名義は元ご主人の場合
この場合は、元ご主人が金銭的負担をしてくれるので、実質的にタダでもともと住んでいたマイホームに継続して住むこととなります。
専業主婦だった元奥さんにとっては、金銭的に厳しい生活を暫時送ることになりますので、大きな利点です。
しかし、元ご主人がいつまでも住宅ローンを支払い続けるとは限りません。
元ご主人も新しいパートナーを見つけて、結婚するとなった場合は、元奥さんが住んでいる元マイホームについて、いつまでも面倒を見ていく余裕がなくなるかもしれません。
もしかしたら、売りに出すとも言いかねません。
その時は、新しい住居を探したり、実家へ戻ることも考える必要があります。
・離婚後マイホーム及び住宅ローン契約名義を元奥さんに切り替える場合
上記のケースと異なり、元奥さんに名義変更し、住宅ローンの支払いも元奥さんが行うことになりますので、勝手に売りに出されるとか、ローンの支払いを止められたり、滞らせたりするというリスクは完全になくなります。
この場合は、元奥さんが改めて住宅ローンを引き継ぐことになりますので、銀行の審査を受ける必要があり、無事に住宅ローンの契約の引き継ぎができるかという懸念があります。
また、無事にローン審査が通り、お仕事ができる環境となったとしても、倒産等で失職してしまったら、ローンの支払いが滞り、マイホームを手放さざるを得ない事態になるかもしれません。この点がリスクとして発生します。
・マイホーム及び住宅ローン契約名義は元ご主人のままにして、元奥さんは元夫に対して住宅ローンを支払う場合
所有権や住宅ローン契約者の状態をそのままにして、元奥さんが住み続けるために、家賃みたいな感じで残債を支払うケースです。この場合は、最悪元ご主人がローン残債支払いを止めてしまったとしても、元奥さんの資金提供で住宅ローン残債を減らしていくこととなりますので、安心して住むことができます。
ただし、元奥さんが住宅ローンを肩代わりしたとしても、あくまで所有権は元ご主人のものですから、完済したとたん「出ていけ!」といわれる可能性がありますし、勝手に売りに出すことも考えられます。
そのためには、完済後は財産分与として元奥さんに名義変更する旨の離婚協議書(公正証書)を作成しておく必要があります。場合によっては財産分与の仮登記も検討しましょう。
近年、お互いに資金を出し合ってマイホームを購入、建築するケースが散見され、資金を出した割合に応じて夫婦で共有名義にすることが多いです。
住宅ローンについても、元夫婦間の持ち分に応じて、ローン残債を支払うことになります。
その際に気を付けるべきことは、元ご主人がローン残債の支払いを止めてしまうことです。
また、どちらかがもう売りたいと思っても、売れた場合は必ず元夫婦共同で所有権移転や抵当権抹消手続きを行う必要があり、離婚後もこの状態が継続していると非常にストレスがかかることとなります。
また、住宅ローン契約に際して、元ご主人が契約者、元妻が連帯保証人というケースをとることがあります。
銀行は、住宅ローン契約者が支払わない場合は、連帯保証人に支払いを確実に求めてくるので、非常に重い義務があります。
一方で、すでに離婚をしていると、元夫婦間で信頼関係は破綻していますので、元奥さんが連帯保証人として動かなければならないことは非常に酷なことだと思います。
そのため、一度住宅ローン契約している金融機関に相談をしましょう。
- 協議の結果、離婚後も元奥さんが住むことになった場合
上記で、様々なケースで起こりうることを説明しましたが、元奥さんがマイホームに住み続けることとなったら、離婚協議書を作成し、公正証書にすることがモアベターです。
離婚後もマイホームに元奥さんが住み続けること、それに対する条件を文書化すべきです。
そして、元ご主人が住宅ローンを払い続ける場合は、その約束を公正証書に記しておく必要があります。
離婚時に決着すべき事項としては、親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料が主になりますが、財産分与においてはマイホームの処分が一番大きな問題になります。
このブログで主だったケースを記載しましたが、不動産に関してはいろんな事象が取り巻いていることが多く、不安要素になりますので、もし、離婚をしようと思い、お子さんの将来を含めてご相談がありましたら、ぜひお声がけください。
私は、毎日、何らかの形で離婚に関する事柄を取り扱っております。
もし、離婚のことでお困りのことがありましたら、まずは下記よりお電話、メールを下さい。
心配事を少しでも軽くできるように、お話をお伺いします。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。
※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。