こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。
タイトルの件で解説します。
私が離婚に関する相談を受けるときに、相談者さんが「夫(もしくは妻)がケンカのたびに家出をして、なかなか帰ってこない」という話をされることがあります。
その時に、私がふと思いつくのは、「悪意の遺棄」を離婚理由として離婚の話を進められないのかということです。
後ほど解説しますが、これは法定離婚事由のひとつのため、「悪意の遺棄」に該当すれば裁判になっても認めてもらいやすいケースとなりえます。
本ブログでは、悪意の遺棄として認めてもらいやすい行為、その証明方法を説明します。
- そもそも、結婚したら、夫婦双方で義務が発生するんです。
結婚すると、実は夫婦双方で下記の義務が発生します。
といっても、円満な夫婦生活を送っていれば当たり前のことなので、その時は義務感を感じることは無いですが、夫婦間がこじれると、途端に重く、厳しいものとなる、ちょっと変わった義務かもしれません。
・同居義務
夫婦は、単身赴任や親の介護などの特別な事情がない限り、同居する必要があります。
・協力義務
夫婦は日常生活での様々な行為について、お互いに協力する必要があります。
・扶助義務
夫婦は、お互いに養う必要があります。原則、収入がある・収入が高い方が相手方を扶養します。この義務の主たる目的は、「相手にも自分と同等の生活をさせる」ということなので、できるときにすればいいというものではありません。
また、毎度出てくる法定離婚事由は、下記の5つです。
・不貞行為
・悪意の遺棄
・3年以上の生死不明
・強度の精神病
・その他婚姻関係を継続し難い重大な事由
ですので、上記義務に反している状態ともいえる、「家出行為が長期間に及ぶ」のであれば、悪意の遺棄に該当するとして、裁判までもつれた際の理由として認められる可能性はあります。
次に、どのようなことがあると、「悪意の遺棄」に該当するのかが重要になります。
・「悪意の遺棄」の定義
悪意の遺棄とは、「夫婦が当然に行うべき同居・協力・扶助義務を正当な理由なく行わないこと」を指します。なお、この義務不履行について、積極的・消極的な状態は問いません。
但し、正当な理由がある等、一定の条件があると、これに該当しないことになります。
・正当な理由がある
例えば、「夫もしくは妻の肉体的、精神的暴力(DV)から逃れるため」の長期間の家出であれば、悪意の遺棄には該当しません。また、単身赴任や遠方の実家の親の介護などで発生する別居についても該当しません。
・夫婦間での別居及び生活費支払いに関する合意がある
余り考えにくいケースですが、夫婦がそれぞれ仕事を持っていて、給料や金銭面では相互干渉しないことに合意していれば、悪意の遺棄に該当しません。
また、生活費が支払われていたり、夫婦相互合意での別居については該当しません。一方、相互合意での別居を行ったにもかかわらず、約束していた金額や期限までに生活費を受け取れなくなったら、悪意の遺棄に該当する可能性が格段に上がります。
生活のためのお金の支払いが滞ったり、初回から支払わないとなりますと、話が違うこととなって、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
・別居期間が短期間
別居期間が短いと、該当しない可能性が高いです。具体的にはこれ以上だと悪意の遺棄であるという、ボーダーライン的な数字は特に示されておりません。
よって、ケースバイケースとはなりますが、さすがに10年以上とかとなりますと、悪意の遺棄に該当すると思われます。要するに、長期になればなるほど、同居義務に違反し、配偶者の生活状況も考慮せずに、自分の好きなように生きていることが容易に想定できる状態になると考えられますので、悪意の遺棄を適用できる可能性があります。
・専業主婦でも悪意の遺棄はあり得る
悪意の遺棄については、字面からも、「何かしら考えがあって、配偶者を棄てる」ということですから、ついつい生活力や経済的に力がある方が、弱い方に向かってこの行為を行うと思われがちですが、専業主婦であっても、悪意の遺棄を行うことがあります。
よくあるケースとしたら、下記のことが考えられます。
・正当な理由なく家出を繰り返す
・夫を身一つで家から追い出す
・自分の実家に戻り、夫婦の自宅に帰ってこない
・突然、行方不明になる
・専業主婦である妻が家事を放棄する
夫側で離婚を考える場合、上記のケースがあるかどうかを検討する必要はあります。
悪意の遺棄を理由にした離婚ができる可能性があることは上記でお伝えした通りですが、次の段階として、裁判では、この事実を証明しないと、離婚を認めてもらえません。
そのためには、どんな証拠を提出して、悪意の遺棄があることを証明していくのかを解説します
・悪意の遺棄を証明するための証拠事例
主に、下記のものが少しでも多くあると、認められやすくなります。気が付いたら、とりあえずはなんでも残しておくようにしてください。
・生活費の支払いを受けている通帳
→支払われなくなった事実が分かると、なおさら良いです。常に通帳記入を行ってください。
・配偶者の給与振込口座
→途中で変えられる場合が考えられるので、常に通帳記入を行ってください。
・相手からのメール、手紙など
→まず、ここに戻ってきてほしいとお願いし、無視されて返事がないことや「戻らない」と返事されたことを残してください。
・別居の原因や時期がわかる資料
→日記、手紙、メモなんでもOKです。
・別居以降、都度住民票を取り、配偶者の異動した記録が出てくれば、悪意の遺棄の端緒と考えることができます。
一方で、悪意の遺棄の証明はそうそう簡単ではないので、裁判までもつれることを想定したら、残り4つの法定離婚事由を活用して離婚できる可能性も引き出しておく必要があります。ですから、それを見据えた証拠集めをしておくのが良いでしょう。
配偶者が愛人の家に住んでいたら、「不貞行為」があったはずと想定できるため、これを理由とした離婚請求ができるでしょうし、一方的かつ長期間の別居状態でしたら、「その他夫婦関係を継続し難い重大な事由」を理由とした離婚請求ができる可能性があります。
なお、それぞれの離婚原因の証明方法については、ケースバイケースなので、私を含めた離婚問題が得意な弁護士に相談するのも一考です。
ある日突然、一方的に別居されて、生活面でも金銭面でも困窮したら、とても傷つき、出ていかれた方の配偶者の人生が立ち行かなくなり、結果として夫婦関係は破綻していると考えられます。
ただ、「悪意の遺棄」を理由としての離婚は、どのような主張や立証をすることで成立させるのかは、実際問題として非常に難しいところです。また、離婚をするとなったら、慰謝料が気になるところですが、実際にどれくらいの金額を請求するのが妥当なのか、請求額を認めてもらうだけの証拠はどれくらい集める必要があるのか分からないかと思います。
そこで、私は、毎日、何らかの形で離婚に関する事柄を取り扱っております。
もし、離婚のことでお困りのことがありましたら、まずは下記よりお電話、メールを下さい。
心配事を少しでも軽くできるように、お話をお伺いします。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。
※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。