こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。
タイトルの件で解説します。
夫もしくは妻が急に出て行ってしまい、実家などの思い当たるところに連絡しても不在で、どこに行ったか分からない、電話しても出てくれない、こんな状態に陥った場合、離婚の話をしようにもできないということになってしまいます。そんな場合は、どうしたらいいでしょうか。
このあたりを考察してみようと思います。
- 急に出ていかれて、連絡が取れずに、途方に暮れている。
まず、離婚を進めるためには、お互いに話し合いをすることが必須となりますので、所在不明、音信不通で離婚を進めていく場合は、状況に応じた対応をする必要があります。
そこで、下記2つのパターンが考えられるので、各パターンの流れを記載します。
・所在は判明しているが、電話等を取ってくれない場合
出ていった夫もしくは妻が例えば実家にいる、どこかのビジネスホテルにいるなど、所在は分かっているけど、携帯電話は取らない、Eメールや手紙を送っても返信がない場合は、まず協議離婚での決着は難しいと言わざるを得ません。
この場合は、まず離婚調停を申し立てて、調停離婚での成立を念頭に置いて進めます。
なお、離婚調停は、出ていった夫もしくは妻の住所地を管轄する家庭裁判所への申し立てが必要なので、夫もしくは妻が遠方に住んでいると、その裁判所に出向く必要があるため、時間的金銭的負担が大きくなることは覚悟してください(裁判所の許可があれば、電話調停という形も可能ですが、初めての調停で顔の見えない調停委員に電話で事情を伝えるというのは、やり難さを感じることもあるかもしれません。)。
また、離婚調停の場に夫もしくは妻が出てこない場合は、調停不成立となり、裁判離婚へと進めることになります。
・所在不明、行方がわからず、かつ連絡が取れない場合
出ていった夫もしくは妻の実家や立ち寄りそうなところには全て当たってみたけど、不在でどこに行ったか分からない場合は、まず住民票や戸籍の附票で調査してみましょう。
あなたには何も伝えずに、シレっと転居手続きを行っている可能性があります。その時には、新しい住所へ転居した旨の記録がされますので、そこで所在を明らかにすることができます。所在が明らかであれば、離婚調停を申し立てることで離婚手続きを進めることになります。
しかし、住民票等は変えずに、居場所を黙って移されると、もはや調べようがないため、いきなり離婚裁判を提起することになります。
離婚は、原則調停を申し立て、調停が成立しなかった場合に、離婚裁判を起こす流れになりますが、相手の所在が分からないと管轄裁判所も分からず、調停申し立てができないため、いきなり離婚裁判を起こしていいことになっています。裁判の場合は、公示送達という裁判所の掲示板に一定の記載事項が書かれた文書を張り付ける方法で、所在不明の夫もしくは妻に対して、裁判書類を郵送した扱いをします。また、夫もしくは妻が裁判に出ず、結果として何も対応しなかった場合でも、離婚の判決は出されますが、このブログで頻出の5つの法定離婚事由が必要となります。
- 所在不明、音信不通で法定離婚事由は何が考えられる?
このブログで頻出のキーワードである「5つの法定離婚事由」ですが、所在不明、音信不通の場合ですと、どんなものが考えられるでしょうか。
・不貞行為:所在不明、音信不通になった夫もしくは妻が、あなた以外の異性との同居を直前までに把握しているようでしたら、不貞行為の可能性を指摘して、この理由での離婚を認められる可能性はあります。
・悪意の遺棄:夫もしくは妻が勝手に家を出て行ってしまって、将来的に同居に応じないとか、音信不通で生活費もロクに渡してくれない状態だと、この理由での離婚を認められる可能性はあります。
・3年以上生死が明らかでない:これについては、「生死不明」なので、単に所在不明、音信不通では認められませんので、あまり考えなくていいと思います。
・強度の精神病にかかり、回復の見込みがない:これについても、夫もしくは妻が強度な精神病患者でないと認められないため、あまり考えなくていいと思います。
・その他婚姻を継続し難い重大な事由:これが一番該当しやすいのではと考えます。DV、モラハラ、セックスレスなどは、この重大な事由の一例ですので、所在不明、音信不通状態に陥り、長期間別居状態であれば、この理由での離婚を認められる可能性はあります。
裁判離婚は、双方にとって肉体的精神的疲労、時間的金銭的消費が激しいため、やはりできるだけ協議や調停で進めたいところです。そうなると、夫もしくは妻の所在把握が肝心となります。そこで、連絡を取るために取るべき方策をお知らせします。
・所在判明の場合
まずは、電話、Eメール、LINE、手紙などあらゆる通信手段を用いて、連絡を取るようにします。しかし、当事者同士では一切連絡がつかないことはよくあることです。よって、その場合は、弁護士から連絡を取ってもらうことも考えましょう。当事者間では一切話はしたくないけど、第三者が入ることで、交渉が開始されるケースはままあります。
当然、費用は発生しますが、ご自身が少しでも有利に離婚を進められる可能性が高いため、検討の余地はあるかと考えます。
・所在不明の場合
先述のとおり、住民票や戸籍の附票を取得して、新たな住所が判明する可能性はあります。ご自身で取得できない場合は、弁護士に依頼することで、弁護士が調査のために住民票等を請求することが可能です。
また、職場の同僚、その家族、夫または妻の友人などに連絡が取れるのであれば、彼らに連絡先の聞き取りやコンタクトを取れるように間に入ってもらうことも考えてもいいかもしれません。
急に出ていかれるわ、音信不通だわという状態だと、どうしても落ち込んだり、塞がったりする精神状態になるのはよくわかります。話が全く進みませんから、宙ぶらりんになるので、得も言われぬ不安にさいなまれますよね。
もし、あなたの置かれている環境や離婚の原因として、5つの法定離婚事由に該当するような場合は、いきなり離婚裁判を起こす方法があります。一方で、これに該当しない場合は、基本的には話し合いでの対応となるため、夫もしくは妻の所在を調査、確定し、何らかの形で連絡を取る必要があります。
この場合だと、当事者間での対応だけで解決することは不可能であることが多いので、弁護士に依頼して進めた方が、意外と円滑に進む可能性があります。まずは一人で問題を抱えずに相談だけでもしてみることをお勧めします。
私は、毎日、何らかの形で離婚に関する事柄を取り扱っております。
もし、離婚のことでお困りのことがありましたら、まずは下記よりお電話、メールを下さい。
心配事を少しでも軽くできるように、お話をお伺いします。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。
※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。