夫が、妻が、うつ病になったから離婚したい!

コラム

 

こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。

 

タイトルの件で解説します。

 

・ご主人がうつ病になって、働けなくなり、生活が苦しい。

・妻が突然、毎日のように「死にたい!」「殺してやる!」と言うようになり、家庭が崩壊しつつある。

 

このような状態になると、ご自身はもちろん、お子さんなど同居されている方の精神的な悪影響が心配されますし、日々の生活にも悪影響を及ぼします。

 

ですから、「離婚してしまおう!」と思うのは自然なことだと思います。

ご本人もご家族も苦しい思いをするのが、うつ病を含めた、突然の病気です。

 

特に、うつ病は、「心の風邪」とも言われ、誰でも簡単にかかる病気です。そのうえ、適切な治療をしたとしても、再発、長期化する可能性のある病気です。

原則、夫婦は、「相互扶助」という法律上の義務を果たす必要があります。

平たく言いますと、「いかなる困難も、お互い手を取り合って、協力して乗り切る!」義務が夫婦にはあります。

 

一方で、どうしても離婚したいというお気持ちもおありでしょうから、それを実現させるためにはどうしたらいいのかを今回はお伝えします。

 

・うつ病を理由にした離婚はできるのか?

まずは、大前提となるこのテーマ。

法律上、離婚できる理由は民法で下記の5つと決まっております。

 

・配偶者に不貞な行為があったとき。

・配偶者から悪意で遺棄されたとき。

・配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 

うつ病の場合は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」に該当するかどうかが問題になり得ますので、うつ病が「強度の精神病」に該当するかどうかが争点になります。

そして、先ほどお伝えした、こちらも法律上義務として定められている夫婦間での「相互扶助義務」を果たせないくらいにうつ病が強度なものであると裁判所が認めると、法律上の離婚理由となり、離婚が認められることになります。

 

よって、パートナーのうつ病が、精神科医などの専門家の診断や鑑定等によって、

 

・「強度の精神病」であること

・「回復の見込みがない」こと

 

を証明する必要があります。

 

なお、協議離婚や調停離婚の場合は、夫婦間の話し合いで解決できますので、法律上の離婚理由があるかどうかは問題になりません。

 

一般的に、うつ病は誰にでもかかる可能性があり、適切な治療で回復できるものと解釈されておりますから、離婚理由としては認められにくいと考えて問題ないかと思います。

 

それでも「この人とはもう離婚したい!」と考えているのであれば、

 

・「強度の精神病」であること

・「回復の見込みがない」こと

・「夫(妻)に対して、離婚に至るまでにキチンと向き合って、誠実な対応をしてきたか」

・「精神病患者として認定された夫(妻)が離婚後も安定した生活ができるか」

 

を主張立証し、裁判所に対して訴えかける必要があります。

 

2、うつ病のパートナーと離婚するためのポイント

次に、どうしてもうつ病になったパートナーとの離婚へと進めたい場合に、具体的にどのような動きをしていく必要があるかをお伝えします。

 

・うつ病になったこと以外にも離婚理由はないのか?

パートナーがうつ病になったからと言って、すぐに離婚を考えるということは、うつ病になる以前から考えていたのではないでしょうか。うつ病をきっかけにして、離婚することに踏ん切りをつけた可能性がありますよね。

うつ病のパートナーの世話や看病をしているうちにモラハラに遭ったとか、DVが発生したとか、我慢の限界を超えてしまって、ご自身も精神的に参ってしまって、離婚を考えるようになったのではないでしょうか。

一度、冷静になってご自身の気持ちを整理する必要があります。

 

離婚理由次第では、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」を離婚原因とした離婚が可能かもしれません。

裁判になったときには、離婚理由を裏付ける証拠書類の提出を求められるため、日記をつける、メモを残す等日頃から記録を残し、裁判官から「離婚したほうがよい」と判断されるような証拠作りを心掛けてください。

 

・ひとまずは協議離婚を目指す

日本の離婚の90%以上は、夫婦間の話し合いで解決する協議離婚です。

ですから、出来る限り離婚条件をお互いに詰めて、書面に残す形で済ませたいところです。

その方が、時間的、肉体的、精神的消耗が押さえられます。

しかし、パートナーがすぐにキレる、話し合いのアポイントが取れない、お互い顔を合わせたくないなど、話し合いができないこともあるかと思いますので、その場合は、弁護士に交渉を依頼して、弁護士を通じた話し合いを行い協議離婚することも可能です。

 

そして、話し合いで解決できなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

なお、離婚調停は、調停を行う日が月に1回程度のため、話し合いが順調に行かない場合は、長くかかると1年程度になることもあります。

 

・できるだけ証拠は揃えましょう。

調停で話し合いが決裂した場合は、離婚裁判を提起することになります。

この場合は、裁判官に「夫婦関係が破綻しているから離婚したほうがよい」と判断できる証拠の提出が不可欠ですので、ご自身が持っている各書類をしっかりと準備できることが肝要です。

下記に例示しておきますので、ご参考ください。

 

(準備したほうが有利となると考えられる証拠)

 

・パートナーの治療履歴

・「回復の見込みがない」と診断された精神科医等の診断書

・うつ病発生前後から受けた暴言や暴力などの詳細を記した日記や録音

・パートナーから暴力を受けていれば被害にあった診断書

 

なお、先ほどお伝えしたように、「精神病患者として認定された夫、妻が離婚後も安定した生活ができるか」も判断基準の一つとなります。

よって、例えば、下記のような条件が整っている旨も裁判官に訴えかける必要があります。

 

・離婚後、パートナーが実家に戻って、両親と住むことができる

・離婚後の生活保障として数年分の生活費をキチンと渡す

 

離婚をお考えの方は、一度私を含めた、離婚専門弁護士に相談いただくことをお薦めします。

 

もし、離婚のことでお困りのことがありましたら、まずは下記よりお電話、メールを下さい。

 

心配事を少しでも軽くできるように、お話をお伺いします。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

 

※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。

 

※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。