離婚時に受け取った慰謝料等に税金がかかるパターン

コラム

 

こんにちは。大阪府豊中市の離婚が得意な弁護士の武澤です。

 

タイトルの件で解説します。

 

私は、毎日、何らかの形で離婚に関する業務を取り扱っており、調停成立直後の慰謝料等の相談も受けております。

 

詳しい内容については、税理士さんや司法書士さんをご紹介しておりますが、あくまで一般的な内容について、こちらでお伝えしようと思います。

 

  • 【原則】かからないってことは、かかることもありますよね・・・?

 

前回のブログで、「慰謝料には税金は【原則】かかりませんので、安心してくださいね。」

と記載しました。

 

そうなんです。この【原則】っていうコトバが厄介でして、税金がかかることもありえます。

 

復習になりますが、慰謝料が持つ性質は、身体的、精神的損害に対する賠償です。

例としては、DV、浮気などで発生した精神的な損害に対するお金等による解決があります。

また、所得税法上でも、【損害賠償金は非課税所得】と規定されております。

 

よって、慰謝料には原則税金はかかりません。

 

ただし、原則の反対は例外。例外のケースに当てはまると、税金はかかります。

 

  • では、どんなケースだと税金はかかるの?

 

このブログを読んでくださっている皆さんが気になる、「慰謝料でも税金がかかってしまうケース」について、説明します。

 

考えられるケースですと、大まかに下記4つが該当します。

 

  • 慰謝料が過大だと判断される場合
  • 不動産の所有権移転を離婚成立前に済ませた場合
  • 不動産の持分または所有権移転登記手続をする場合
  • 慰謝料を支払う方が税金を払わなければいけなくなる場合

 

もうひとつ、「偽装離婚」のケースもありますが、これは犯罪行為になりえますので、

ここではあえて書きません。

これら4つについて、詳細を説明します。

 

・慰謝料等が過大だと判断される場合

 

慰謝料等で受け取った金額が不当に多すぎると税務署から判断されると、贈与税や所得税が発生します。

受け取った慰謝料の額が、事案や精神的損害に見合ったものなのかなどを考慮されます。

税務署が、「あらゆる側面で慰謝料を受け取った方の事情を考慮してもなお多過ぎる」と判断した場合、その多過ぎる部分に贈与税がかかることとなります。

 

該当しそうなケースとしては、下記のような条件が考えられます。

 

・夫の財産が不動産を含めて約4000万円

・結婚していた期間が1年間

・離婚の条件として、妻に約4000万円の全財産を慰謝料等で渡すこと

 

わずか1年の夫婦生活で、4000万円の財産を構築することは、よっぽどのことがない限り、考えられないので、結婚期間中に作り上げた財産以上の部分について、税務署の決定した額に贈与税、もしくは所得税が発生します。

 

・自宅の所有権を離婚成立前にもらったケース

 

離婚が成立する前に慰謝料等の名目で一緒に住んでいた不動産を受け取ったケースです。この場合ですと、受け取った側に贈与税が発生しますが、条件に当てはまれば、配偶者控除が受けられます。配偶者控除の条件については、税理士にご確認願います。

なお、贈与税は、年間110万円までは免税点と言いまして、税金がかかりません。

よって、配偶者控除を適用できれば、年間110万円に配偶者控除の金額までは税金が発生しません。

ただし、自宅所有権に限られますので、賃貸物件、別荘、テナントビル等は対象外です。

 

・不動産の登記手続き関連で税金がかかるケース

不動産に関する税金は、金額が結構大きいです。

財産を分与する目的での不動産譲渡には不動産取得税は原則発生しませんが、慰謝料や受け取る側の生活保護を目的として譲渡された不動産だと不動産取得税が発生します。

なお、税金額は、土地及び住宅は固定資産税評価額の4%(原則)です。

例えば、土地1000万円、建物1000万円だとそれぞれ40万円ずつ合計80万円かかります。

なお、これについては、自宅不動産等で軽減税率の対象になるケースがありますので、税理士さんや不動産業者さんに確認が必要です。

 

次に、不動産登記のために必要な税金があります。登録免許税と言い、登記申請時に印紙で納めます。これも軽減税率の対象になることもありますが、原則固定資産税評価額の2%です。上記の例で言いますと、合計40万円納税する必要があります。

 

不動産は固定資産税評価額で取引することはまれで、原則売買契約が成立した時の時価で取引されますので、時期によって価格の変動があります。また、住宅ローンがあると、手続がさらに複雑かつ手続の変動がありますので、あらかじめ「不動産取得税、登録免許税等不動産の財産分与で発生した費用については、分与を受ける人が支払う」などの条項を離婚協議書に記載しておくことが望ましいです。

 

  • 慰謝料を支払う方が税金の対象になる場合

慰謝料や財産分与が【原則】税金がかからないことはすでにお伝えした通りですが、慰謝料等を支払う方に関しては、下記の3つのケースで税金が発生することがあります。

 

1.自分の財産では不足しているため、実家等に助けてもらった

2.渡した慰謝料等につき、税務署等が「高すぎる」と判断した

3.不動産、株など、金銭以外の有価物で慰謝料を支払った

 

1.の場合は、本来自身で支払うべき慰謝料のうち、一部を実家等に助けてもらったという事実があるため、他人から贈与を受けて慰謝料を支払ったと取り扱われることとなり、贈与税が発生することがあります。

 

2.の場合は、脱税、偽装離婚を疑われる原因になりえます。

 

3.は、渡した不動産や有価証券の価値で課税すべき金額が変わってきますので、税金が発生する可能性があります。

 

慰謝料を受け取る側にとっては、支払う側の支払う税金に関心が行かないことが普通ですが、特に不動産に関係する税金は場合によっては百万円単位で発生する可能性があり、税金を考慮することで、受け取れる慰謝料総額が変わってしまうことがままあります。そこで、しっかりと税理士等専門家に関与してもらい、お互いに支払う税金を抑えることも考えて離婚交渉に臨むべきかと思います。

 

  • もし、税金に関して不安になったら・・・、まずは税理士さんに相談、そして離婚協議書作成です!

 

前回も記載しましたが、税金が発生するケースはそんなにありません。また、国に非課税ですよとお伝えしなければならないことも前回に記載しました。そのためには、証拠書類として、「離婚協議書」の作成が不可欠です!

まずは、慰謝料や財産分与の取り決めについて、キチンと離婚協議書に残しておきましょう。そして、税金面で不安がある場合は、税理士に相談したほうが得策です。

 

なお、税理士のご紹介は、私からできますので、ご安心下さい。

 

離婚をお考えの方は、一度私を含めた、離婚問題に強い弁護士に相談いただくことをお薦めします。

 

もし、離婚のことでお困りのことがありましたら、まずは下記よりお電話、メールを下さい。

 

心配事を少しでも軽くできるように、お話をお伺いします。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

 

※この記事は、読んでいただいている皆様にとって分かりやすい言葉を使って、記載しております。

 

※本記事を利用して、ご自身で対処する場合は、自己責任で行ってください。